とにかく充実、の一言に尽きる。全128頁の半分は設定を交えた場面カット、1ページあたり平均でおよそ10カット近くはあるだろうか。残りの構成半分はメインスタッフや声優へのインタビュー、そしてキャラデザイナークラスのアニメーター5名による描き下ろしイラスト。
フィルムブックの代役とも言える多数の場面カットは劇場での興奮を思い出させてくれるし、何より庵野監督への絶対的な信頼を置いたスタッフ達のインタビューが熱い。TVシリーズと比べると「序」はヤシマ作戦を通じてスタッフワークの連携にテーマを置かれた展開となっていたが、それはスタジオカラーの持つ数々のスタッフの高い誇りから溢れる「熱意」が、そのまま映像に反映されていたのだと気付かされる。また、これからの「破」に向けての充分すぎる意欲が伝わってくるのもファンとしては嬉しいところ。是非この本を読んで、アニメは大勢の力があって初めて成り立つ事、そしてスタッフをまとめる総監督が庵野秀明である事で産まれる屈指の名作に我々はリアルタイムで立ち会っているのだ、という事を実感して欲しい。
ここからはくだけた文でいつも通り書きますが、ネタバレなしで感想を伝えるのはとても難しいけど、興奮してる様はなんとなく判って頂けるんじゃないかと思う。128ページで税込み1260円、1ページ10円なんて考えると安い買い物だったわ!!
それでは、以下簡単にコンテンツ紹介です。
内表紙:貞本義行によるティザーポスター
キャラクター紹介:ニュータイプ誌掲載の鈴木俊二氏による版権イラスト2点
見開き描き下ろしイラスト:鈴木俊二、鶴巻和哉、松原秀典、本田雄、奥田淳
キャスト・サウンドインタビュー:緒方恵美、林原めぐみ、三石琴乃、鷺巣詩郎、宇多田ヒカル
オピニオン:藤津亮太(アニメ評論家)/コインの回転
スタッフインタビュー:
田中達也(原画)「電柱はキャラクター」
山下いくと(主・メカニックデザイン)「黒々した空をカタチのよくわからない巨大なものがグリーンのパーツだけ不気味に光らせて通り過ぎていくのは、カラーリングを考えたときの理想の演出でした」
本田雄(メカニック作画監督) 「初号機を自分のイメージ通りに動かしたかった」
高倉武史(デザインワークス) 「どこまで細部まで描くことができるのか、やれるだけやってみようという感じ」
okama(デザインワークス)「ホームランを打つのが当たり前の現場」
増尾昭一(特技監督) 「画面にスパイスを加える"なんでも屋"です」
樋口真嗣(新作・画コンテ)「三次元でありながら四次元のデザイン」「『エヴァ』ならどこまでもつくり続けられる」
京田知己(新作・画コンテ) 「庵野さんの覚悟、それが参加の理由です」
原口浩(演出) 「TVシリーズでできなかったことをデジタルの方法論で実現」
福士享(撮影監督)「ここまでデジタル撮影を追及した監督はいなかった」
加藤浩(美術監督)「かつてと同じようで、同じでない風景を描いた。美術に関しては"リビルド"を超えているかもしれない」
松原秀典(作画監督)「エヴァにはすでに確固たる世界観がある。僕がかってに解釈していいものじゃない」
貞本義行(主・キャラクターデザイン・作画監督)「ただ立ち上がるだけの動作。それだけで魅せなければならなかった」
鬼塚大輔(CGI監督)「特撮のミニチュア感こそが『エヴァ』」小林浩康(CGI監督)「作画でできないディテールアップ」
鶴巻和哉(監督)「孤立している人間同士が口先だけで接して、また離れて。他者との触れ合いを避けていたエヴァが変わった」「庵野さんとの仕事は、いつも自分の覚悟が試されている感覚がある」
スタジオカラー内監視カメラ・漏洩中
全スタッフリスト
ニュースサイトをやってる性格上、記事の見出しだけでも書こうと思ったら予想以上に膨大な量に。どんだけインタビュー濃いんだって話ですよ。
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 ENTRY FILE1以下、本を読んで素直に感じたネタバレありの感想です。既に読んだ人向け。
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