10年ぶりに映画化された「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の最新情報を追いかけるニュースサイト。
エヴァに関わったスタッフの作品、動向などもかいつまんで行ってます。
完結編「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」は2020年6月27日公開予定。



貞本義行 もうひとつの物語の行方 月刊ニュータイプ97年12月号

意外と珍しい、「貞本エヴァ」を語るインタビュー。
当時はコミックスが4巻まで、ビデオは10巻(20話)までしか出ていなかった。
テレビ版との違いを確認しながら、コミックスを読み返してみるのも面白い。


――今回の劇場版をもって、アニメの「新世紀エヴァンゲリオン」が終了し、今後ますます「エヴァ」ファンの関心が貞本さんの漫画に集中すると思うんですが、いかがですか。

貞本 アニメのほうは“答え”を出すストーリーづくりをしてないですよね。種をまいて、そこから先は自分で考えてください、というつくり方で。漫画はもう少し違ってくると思います。僕は明確な主張があるほうが好みなので、たとえ稚拙になっても、そういう方向で描けたらなと思ってます。実は結構、「ドラえもん」とか「アンパンマン」みたいな作品が好きで、ものすごく単純なものの中に、泣けるような感動を覚えたりするんですよ。でも結局、「エヴァ」は難しい内容だから、それでもわかりにくくなっちゃうんですけどね(笑)。

――貞本さんの「エヴァ」は、どこか正統派“少年漫画”のような感じがしますね。漫画などでお好きな作品はありますか?

貞本 楳図かずおの「漂流教室」やアニメの「ガンバの冒険」、松本零士の「銀河鉄道999」、少年漫画といえばこれが好きです。この3つに共通してるのは、主人公が自分の居場所を求めて旅をするところで、彼等は物事が終わっても、もとの場所に帰っていかないで、また次なる冒険に、自分の居場所を求めて出ていくんですよ。それがかっこよくて。
 シンジの場合、居場所を求めるというのは、いまいる人たちとどうやっていっしょに生きていくかということなんですが、漫画にもシンジの冒険譚ぽいエピソードが入らないかなと思っています。いまは主人公がひとつの場所に居座っちゃってるから。

――“少年漫画”を指向しつつも、主人公は単純明快なヒーロー像とはならず複雑な心理を抱えていますね。

貞本 「エヴァ」は、主人公のシンジから見た世界を中心に描いているわけですが、結局シンジという人間は、いまの僕や、14歳のころの僕ならどう考えるかと思ってつくってるので、どうしても生っぽさが出るんです。

――貞本さんご自身は、どんな少年だったんですか。

貞本 結構お調子者だったと思います。だけど目立つのがキライという。登場人物でいうとケンスケあたりに近いのかもしれない。そんなものわかりのいい優等生タイプではなくて、よくクールだと言われてました。あきらめが早いようで実はしつこかったり。いわゆる不良ではなかったけど、結構悪いこともやって、反省したり。そういうところは漫画のシンジに通じるかもしれないですね。

漫画における登場人物の役割

――漫画版では、物語の設定や人物の性格などにアニメと違ったオリジナルの部分が加えられていますね。

貞本 実は、人とのコミュニケーションの話を始めたのは漫画のほうが先だったんですよ。本編は使徒との戦いがメーンになるだろうと思っていたら、庵野さんもコミュニケーションのほうにいった。だから最近は路線変更をしようとおもってるんです。同じことをやってもしょうがないし。コミュニケーションがうまくいかないというアニメ版の大きなテーマから、あえてそれてみようかなと。登場人物の性格も、だんだんとアニメとは違ってきたかもしれないですね。

――漫画にも、先日発売された第4巻でアスカが登場しましたが、アスカについてはどんな女の子にしようとお考えですか。

貞本 アスカは性格的に、いい子ぶっていたり、二面性があるところなんかはアニメにも通じるんですが、シンジにとってアスカが“異性”として、ある程度尊敬できる、あこがれを感じるような存在にできたらなと思っています。時には友達、時にはライバル、でも時には異性、と。
 アスカとシンジが使徒を倒すためにユニゾンを組む話では、アニメであったキスシーンをあえてやらなかったんですよ。男から見たら初めてのキスというのは魅力的な事件ではある。でもキスってなんだろうと考えちゃうと、好きな子と肉体的に結ばれる最初の事件じゃないですか。それよりも精神的つながりが先のほうが、僕にはリアリティーがあるかなと。それに男と女の精神的なつながりも、14歳だと大人よりピュアに描ける気がして。漫画で描いた、2人が音楽に合わせて踊る場面が、僕にとってはキスみたいなものですね。

――漫画ではアスカの出生が試験管ベビーということになっていますね。

貞本 アスカには、結構辛いゆがんだ部分があって、それを強く出そうと思ったんです。アスカは異性同士で愛し合って生まれた子ではない、という。アスカの母は男に愛されなかった。彼女もそれを引きずって、男なんていなくても生きていけると思っている。でも心のどこかで父や男性的なものを求めていて、加持に甘えたり、シンジに対しても、拒否してる部分と、自分を抑えきれない感情があって、だんだんシンジを好きになっていく。そんなふうに描けたらいいと思ってます。

――レイについてはいかがですか。

貞本 シンジにとって、アスカがあこがれの異性の象徴だとすると、レイは“母性”だと思っています。シンジの母親の遺伝子をもっているみたいだし。僕自身が、アスカとレイどっちが好きかと言うと、たぶんレイで、どこか母性的なものをもっていて、シンジがくじけそうになったら優しく“けなして”くれるわけです。レイはシンジに「また、逃げるの」って、結構、トドメを指すようなきついことを言うんですが、友達が言ったら絶好になってしまうようなことばなのに、なぜかそうならない。それは母親は絶対に子供を見放さないからなんです。シンジにとって、レイはそんな存在なのかなと。

これからのシンジを描くためにすること

――連載を重ね、最近のシンジは自分の意志を表に出したりと、成長をしているように見えます。これから先、彼はどのように変わっていきますか。

貞本 成長っていっても、人は本質的なところはそんなに変われるわけじゃない。一見大人になったように見えても、それは違うかなと。だからこれまで、友達ができたり、気になる異性が出てきたりと、ポジティブで大人になったように見える彼を一回、ぶちのめさなきゃと……。
 いままでは、シンジがひねくれていた理由も、親父が、叔父さんが、と周りのせいにできたわけだけど、大人になってくると、それでは済まされなくなってくるんです。自分が言ったことややったことで、人が傷ついたりするとか……。だからこれからのシンジには、いままでのように殻にこもって黙っていればやりすごせるというものではない、もっと悲惨なことが出てくるかもしれない。

――まだ先ですがラストはどうなりますか。アニメのようにシンジとアスカのつながりを描くのでしょうか。

貞本 そこが難しい。どうなるかまだわかりません。ハッピーエンドにしたいとは思ってます。でも何がハッピーかというと、劇場版だって、あれはあれでハッピーだし。人間は、生まれたときと死の瞬間は何もないわけで、生きる過程が楽しくないと生きられない。シンジもつらいけど生きていたいと思った。だからハッピーなんですよ。
 それでも一方で、少年漫画として、もっとわかりやすいハッピーエンドはないかな、とも思いますね。

――今後ストーリーを描くうえで、どんなことが鍵になるのでしょうか。

貞本 結局それは、僕の生き方そのものに行き着いちゃうと思うんです。シンジが生きていこうと思う過程を描くためには、僕自身が「僕の人生よかったな」と言えなくちゃいけない。まだ僕はそんなことを振り返れるほど生きてはいないんだけど、僕の人生よかったなと思えるように思考錯誤していって、その結果シンジに「あ、こういうふうに考えていけばいいんだ」って言わせられればと思います。


さまざまな話が飛び出た今回のインタビュー、君はどんな感想をもっただろうか。漫画はさらに盛り上がるので、これからもお楽しみに!!

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2008/07/07 05:34 (Mon)
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