10年ぶりに映画化された「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の最新情報を追いかけるニュースサイト。
エヴァに関わったスタッフの作品、動向などもかいつまんで行ってます。
完結編「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」の公開日は2017年以降を予定。





『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』全記録全集 レビュー・感想記事

少し遅れてしまったが、新劇場版:序の公開一周年を祝して庵野秀明監修・スタジオカラー責任編集の「公式決定本」と題される全記録全集の紹介を簡単にしたいと思う。今ではAmazonで2千円引きで手に入るという事もあって、より多くのファンが手にするためにもこのタイミングでやってみよう、という背景もある。※現在さらに値引きされて4千円オフ

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サイズはA4版のハードカバー、全512ページにも渡るずっしりとしたその重量は、手に入れただけでもひとしきり満足してしまうという完全なコレクターアイテムだ。
早速中身を開くと、庵野秀明総監督からの全記録全集に対するメッセージが記されている。


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始めのコンテンツはフィルムストーリー。旧エヴァでも大きな売上をあげたフィルムブックの代わりとなるもので、全1645カットを2318点で余すことなく収録しており228ページたっぷりとHDマスターより採録した画像を楽しめる。

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全台詞が網羅されているのは勿論、画像の横にはカットナンバーまで記載されたこだわりぶりだ。
一流のアニメーター達が集結して造り上げた名シーンたちが、DVDのフィルムテレシネ仕様とは違った正しい色味で蘇る。

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次回作「破」の予告も収録。
因みに本書に付属される画コンテの予告カットでは、新キャラクターにあてた意味深な設定・注意書きが多くあり、こちらも必読の内容となっている。


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追加台本集では主に5.1chサラウンドでは詳細に聞き取り辛いガヤやオペレーターの台詞まで完全収録。
中にはメインキャラクターたちの言動も見受けられ、脚本決定稿と比較して何を重要だと思い追加したのか、などと想像して楽しむ事ができる。
最後には「破」の予告編の15秒バージョンを想定されたモノローグも記載されている。


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ここからは資料集では最も重要視される「設定」が網羅されている。
このページはネルフとゼーレのエンブレムのラフスケッチから完成図への詳細が記されたものだ。
ゼーレモノリスの背面デザインには新劇場版には現在不参加の磯光雄の名も確認できる。

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こちらは鈴木俊二・松原秀典によるキャラクター設定資料。メインキャラクターやエヴァンゲリオンは勿論、NERV作業員たちの設定も収録。
劇場版パンフレットのインタビューによると「序」では貞本義行によるキャラクター設定が用意されておらず、各アニメーター達は漫画版を参考に描いた者も多いと言う。

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キャラクター達の細かな色指定も欠かさない。

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こちらはメカニック設定集。これはヤシマ作戦で目に入った車載型変圧器。メカニックは他にも庵野秀明による詳細な兵装ビル設定、二子山のイメージレイアウト、自衛隊の軍用機、エントリープラグ内のディスプレイ、黄瀬和哉による兵装設定、模擬シミュレーションにおける3Dデザイン、okamaによるセントラルドグマや第二使徒リリスなどのラフスケッチなど90ページにも及んで記されている。
当然全ページカラー掲載なので、鉛筆や色鉛筆の柔らかな筆致も再現されており、どのページでも飽きさせる事はない。と言うよりは正直、頭がパンクしそうになる程の物量だ。
中でも本田雄による零号機拘束の凍結イメージは、本編では薄暗く見えにくかった為に驚きのデザインで、必見の出来となっている。

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増田朋子による2D貼りこみ素材が3ページ。
町並みで見られる電柱や看板の文字だけでなく、酒瓶・点滴袋のラベル、電車の中吊り広告、伊吹マヤのサインなどが徹底して掲載。


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ここではととにゃん・加藤浩、美峰・串田達也による美術ボード集が数多く収録されている。
美しい背景美術がフレアなどの効果がない状態で、大判でじっくり見られるのは嬉しい。


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インタビューは本書における一番の目玉と言っていいだろう。28人のメインスタッフから得られたテキストは、なんと125ページにも及ぶ。エヴァオタにとっては名前のラインナップを見るだけで垂涎モノ。
一部スタッフは劇場パンフレットや「ENTRY FILE 1」でも名前が見られたが、ここまでヱヴァについて深く語るインタビューはまず無い。新劇場版は旧エヴァのスタッフが数多く参加しており、どのような経由で再び庵野総監督の元に集まったのか、どんな気持ちで新劇場版を作ろうとしているのかという意気込みがハッキリ判る内容となっている。貞本義行へのインタビューは新劇場版に熱を込めるあまり連載中(むしろ休載中?)の漫画版に対する弱音も垣間見え、大変珍しい一面を発見できて可笑しい。

庵野総監督を支えるスタッフの中でも特に興味深かったのは鶴巻和哉副監督へのインタビュー。劇場公開前・公開後で二度氷川竜介さんが訪ねているので、制作時の緊張感に加えて、破制作へ向けての手ごたえが強く感じられる。ガイナックスでは庵野監督に次いで監督作品が多い彼だけに、視聴者にとっても見ごたえのある劇場作に仕上がるだろう。

個人的には、次の全集ではメインキャストへのインタビューも行い、より多くの原画マンへの意気込みを訊ねて欲しいと思う。

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貞本義行へのインタビューには、彼の描いた原画や作監修正、レイアウトなども見ることが出来る。
「破」の予告版の16話・19話のカットには新たな細かい修正が入っている事がわかる。

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色彩設計・菊地和子へのインタビュー。
初号機一体にも、カットによって9パターンもの色指定が存在する事がわかる。キャラクターの数を考えれば、相当な作業だろう。

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これが本書の言うなれば一番の「ステータス」である、『本書独占 庵野秀明総監督ロングインタビュー』。
庵野総監督は序の公開前後にプロモーションも兼ねて数々の誌面に登場したが、全てヤマトのインタビューや島本和彦との対談、他の劇場作品への応援メッセージなどヱヴァとは関連のないものでしかアピールをして来なかった。彼が「エヴァ」と「ヱヴァ」に対して語るのはこの本のみである。

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インタビューは庵野総監督によるレイアウトなどを交え全24ページと、まさにロングインタビュー。新劇場版が作られる際に発表された「我々は再び、何を作ろうとしているのか?」の答えが、全てここに記されている。
庵野総監督が旧エヴァからヱヴァに再構築していく過程はまさに特装版の特典ディスクの「リビルド」そのものであり、インタビューと併せて映像特典を見ることでその理解度は何倍にも増すだろう。

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ティザーポスターの考案例。既に全4部作である事が想定されている事がわかる。
「破」の公開が2008年に間に合わなかったのは残念ではあるが、大の富野監督ファンの庵野目線で見れば、ヱヴァが「新訳・Zガンダム」を意識しているのは明らかである。劇場Zを見た多くのファンが、「どうせなら全て新作映像で見たかった…」と不満を持った事だろう。庵野監督もその悔しさは同じだったはずだ。劇場Zの満足な予算も制作期間も用意されてなかったあの結果と、同じ轍を踏むのはやめよう、と言うのが庵野監督のこだわりなんだろう。公開時期が遅れているのも、最高のクオリティを目指して創っているからなのだと信じてやまない。

最後に、全てで30万文字・文庫本換算で600ページを越えるインタビューを敢行した氷川竜介さんに、最大の敬意を表したい。
庵野監督と同じく特撮が大好きな氷川さん、本文のインタビュー内でヱヴァの話題そっちのけで盛り上がるお二人はとても微笑ましかったです。


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劇場前売りチケットの特典の素材集。貞本画の少年達が揃ったティザーポスターも勿論大判で収録。

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松原秀典さんのカラー社内での張り紙素材。
全てで7点ほどあるのだが、ファン心理としてはこういったスタッフの「遊び」の部分がもっともっと掲載されていた方が、当時のカラー社内の雰囲気やリアリティが増してファンにも伝わるので、このページは「破」の全集以降ではもっともっと拡大して欲しい、と個人的に思う。
「電脳コイル」のロマンアルバムでは「制作日誌」というスケジュールを詳細に追った企画があり、現場の慌しさも伝わって資料的価値も大変高く、見ていて面白かった。次回ではそんなものも期待したい。どちらも是非にお願いします。

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写真掲載はこれが最後になる、巻末の貞本義行描き下ろしポスター。近くに置いたヱヴァ缶と比較すれば、その大きさはわかっていただけると思う。おそらく原画サイズそのままの大きさなのではないだろうか、細かな塗りもじっくり見ることが出来る。


また、本書には特典として「複製画コンテ集」と「劇場生フィルムコマ」が付属している。
画コンテは2冊に及び、そのページ数は本体よりも多い計536ページ。欠番カットや、先にも書いた庵野総監督による「破」の予告コンテがマニアックだ。
生フィルムはオマケ程度のものなので期待しすぎない方がいいが、どんなものが当たっても「自分だけのフィルム」になるのが幸せになることは間違いない。オークションで安く手に入れる事も出来るだろうが、自社制作のスタジオカラーへの少しでも制作費の足しになれば、とこの本を注文するのも悪くないだろう。たとえ僅かでもこの映画に貢献できたのではないか、という錯覚・自己満足が得られる。

以上で簡単な紹介は終わりとなる。安くはない買い物だが、「自分の中のヱヴァ」をもっと大きなものにしたい…というファンには必携の一冊だ。
大好きなエヴァがスタッフ達の熱に煽られ、もっともっと好きになるだろう。

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2008/09/29 23:49 (Mon)
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