貞本義行の10年ぶりとなる最新画集「CARMINE」を開いた
発売日から一日遅れで、Amazonから画集が届いた。前作「DER MOND」の限定版が99年の半ば過ぎに発売した記憶があるので、貞本さんのイラスト集としてはおよそ10年ぶり。タイトルの「CARMINE」はアスカをイメージしてだという事で、前作「DER MOND」(月)とはある意味対称になっている。
それでは早速開封してみよう。

手前に見えるのが本体、特殊装丁付き化粧箱に入った画集。奥が付録のCD、そして描き下ろしのスティックポスター2本。
写真2枚目は本書のお品書き。エヴァ、新劇ヱヴァ、トップ2・フリクリといったガイナ作品は勿論、時かけやサマーウォーズ、.hackに寄稿イラストなど多岐に渡って105点。ここ10年の仕事を一度に振り返る事ができ、まさに図録と言うべき本書はその重量もズッシリ重い。

それぞれサイズ比較。左はコミックスとの比較、真ん中は限定版付録の複製原画と、ウェハーストレカとの比較。ガイナックスから出版されている「アニメーション原画集」より更に一回り大きい。
3枚目はタイトルロゴ無しのありがたみがわかるよう、同じイラストで揃えてみた。大きくてペンのタッチまでよく見える!


ノートリミングで掲載されるのは本書が初のリマスターDVDジャケ群。ゲンドウやリツコは覆われていた部分が取り除かれたため、特に新鮮に見える。
左は少年エースの表紙用イラストだったが、画集用に描き直されているために大きく印象が変わった。画集用に描き直すことは貞本氏にとっては珍しい事ではなく、他のイラストも色味を変えたりしているようだ。それにしてもシンジが隣のナディアと似て…。
右は描き下ろしの1点。巻末コメントによるとドガを意識したとかしてないとか。因みに描き下ろしはもう1点、貞本ヒロイン全員集合なイラストが見開きで収録されているが、是非手にとって確かめて欲しい。



左からTHE END OF EVANGELION、リニューアルDVD決定時の「エヴァ再起動」、そして新劇場版シンジ。
まさか「エヴァ」が21世紀に再生するとは、1997年には思わなかった。

ここからエヴァを離れる。大ヒットが記憶に新しい時かけ、そして最新作のサマーウォーズ。家族全員集合のキービジュアルはつい先日解禁されたばかり。

フリクリ・トップ2のDVDパッケージイラストは勿論、ポスターイラスト、CDジャケまで余す事なく全て収録。3枚目の写真は未発表だったハル子とマミ美。

意外と多く収録されているのが.hack。描き方がデジタル画に完全に移行してからは初の画集となるので、これまで放出されずに溜まっていた。真ん中と右のかわゆい子はそれぞれ雑誌のコンセプトから発注されたイラスト。普遍性を持った流石のデザイン力に驚かされる。

と、これまで紹介してきたように、全てで100点を越えるイラストが収録されている。巻末には絵にコメントを添えたものもあり、最後までお腹いっぱいという感じ。
手がけている作品が多いだけに、画集に収録されない「こぼれもの」のイラストがあるんじゃないかと思っていたが、記憶してる限りではコミック版エヴァ5巻以降のイラストは全て網羅していると言っていい。収録されなかったものと言えば、つい最近発売されたばかりのアスカの前売りチケット用イラストくらいか。これは発売時期を考えれば、単純に本が製本された後に出来たイラストなんだろう。
ふう満腹満腹。

が、恐ろしいのは豪華限定版はこれで終わらない事。特典として、これまで楽しんできたイラストを全て収録したデータCDが付いてくるのだ!(さすが値段がめちゃくちゃ高いだけある!) 早速ディスクを入れPCで起動すると、壁紙にも設定できとても気軽に全イラストを楽しめた。カタログのようでもあり、美術館のようでもある。

データイラストはこんな感じ。最初から壁紙用に小・中・大のサイズが用意されている。これはサンプル用という事で、最も小さい「小」。可愛すぎるだろ真琴…。



更に豪華版にだけ収録された、細田守監督、鶴巻和哉監督、庵野秀明監督との対談集。それぞれ貞本氏へのキャラクターデザインの依頼の姿勢が全く違って面白い。互いの腹を知った仲の庵野監督はほぼデザインの注文はナシ(ただし乳のサイズだけこだわる)、ほぼ同期の鶴巻監督は頭に既に構築されたものを貞本氏にクリンナップしてもらう、時かけの際に初対面だった細田監督はホテルに缶詰めで一緒に寝泊りして短期間でまとめる…などなど。全てに共通している事は、コミュニケーションからデザインは生まれ、キャラクターの背景(歴史)なくしてデザインなしという事だった。
個人的に最も面白かったのがマッキーとの対談。貞本・鶴巻の両氏が若手アニメーターをいかに育成するか、「先輩」として今後を見ていたこと。社外のアニメを沢山担当して、1シーンをまともに描けなくなっている現場を危険視し、新劇場版を作る「カラー」が少しずつ体制を変えていきたいという明確な意思が見られた。この辺りは興味深かったので貞本ファンだけでなく、ガイナックスファンなら読んでおきたい。(と言っても高価な本なので、手に入らないファンは友人同士で見せ合いっこなどの相談をしてみよう)
この対談部分には貞本氏が関わったアニメのキャラクター設定も掲載されている。特にヱヴァの新劇場版は、「序」の段階ではキャラ設定がなかった為に今回はちゃんと制作してある事に注目。また、アスカの苗字も…。

本画集・限定版最後のコンテンツは、描き下ろしスティックポスターだ。とにかくデカい、長い。左上スミにコミックス1巻を置いたが、いかに大きいかがわかるだろう。「破」の原画・作監作業に入っているためなのか、線・塗り共にアニメっぽいテイストになっている気がする。
因みにこの2枚だけは特典ディスクに収録されていない。前作「DER MOND」でも、特典のアスカ描き下ろしポスターはその画集内に収録されなかった。ので、まさに現物のみの一品モノとなっている。大切にしよう。
とまあ、色々紹介してみたがこれでひとまず終わり。特典無しの普及版は年末に発売予定だ。おそらくそちらは3000円程度での発売と予想されるので、この豪華版は実質+10000円で特典と装丁を手に入れたという事になる…。選ぶのは自由なので、よく考えた上で決めていただきたい。
個人的にどうだったかと言うと、2枚の「複製原画」は正直言ってペラい。厚いボード板にでも印刷されるかと思ったのでその点は拍子抜けした。だがそれ以外の、ズッシリとして丈夫な装丁、描き下ろしのポスター2枚、何より貞本氏のパーソナルな部分に触れられる3人との対談集はとても読み応えがあった。おまけにCD-ROMでいつでもイラストを楽しめるのだから、今は満足した気持ちでいっぱいだ。価格の高さは、これから何度も何度もページを開いて得るものに比べれば、充分カバー出来ると見通した。
値段が張る分、エヴァが読者の日常を侵食していく事は保証しよう。
この記事が、あなたが画集を手にとるまでの、少しでも役に立てたら幸いです。
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それでは早速開封してみよう。


手前に見えるのが本体、特殊装丁付き化粧箱に入った画集。奥が付録のCD、そして描き下ろしのスティックポスター2本。
写真2枚目は本書のお品書き。エヴァ、新劇ヱヴァ、トップ2・フリクリといったガイナ作品は勿論、時かけやサマーウォーズ、.hackに寄稿イラストなど多岐に渡って105点。ここ10年の仕事を一度に振り返る事ができ、まさに図録と言うべき本書はその重量もズッシリ重い。



それぞれサイズ比較。左はコミックスとの比較、真ん中は限定版付録の複製原画と、ウェハーストレカとの比較。ガイナックスから出版されている「アニメーション原画集」より更に一回り大きい。
3枚目はタイトルロゴ無しのありがたみがわかるよう、同じイラストで揃えてみた。大きくてペンのタッチまでよく見える!


ノートリミングで掲載されるのは本書が初のリマスターDVDジャケ群。ゲンドウやリツコは覆われていた部分が取り除かれたため、特に新鮮に見える。



左は少年エースの表紙用イラストだったが、画集用に描き直されているために大きく印象が変わった。画集用に描き直すことは貞本氏にとっては珍しい事ではなく、他のイラストも色味を変えたりしているようだ。それにしてもシンジが隣のナディアと似て…。
右は描き下ろしの1点。巻末コメントによるとドガを意識したとかしてないとか。因みに描き下ろしはもう1点、貞本ヒロイン全員集合なイラストが見開きで収録されているが、是非手にとって確かめて欲しい。



左からTHE END OF EVANGELION、リニューアルDVD決定時の「エヴァ再起動」、そして新劇場版シンジ。
まさか「エヴァ」が21世紀に再生するとは、1997年には思わなかった。



ここからエヴァを離れる。大ヒットが記憶に新しい時かけ、そして最新作のサマーウォーズ。家族全員集合のキービジュアルはつい先日解禁されたばかり。



フリクリ・トップ2のDVDパッケージイラストは勿論、ポスターイラスト、CDジャケまで余す事なく全て収録。3枚目の写真は未発表だったハル子とマミ美。



意外と多く収録されているのが.hack。描き方がデジタル画に完全に移行してからは初の画集となるので、これまで放出されずに溜まっていた。真ん中と右のかわゆい子はそれぞれ雑誌のコンセプトから発注されたイラスト。普遍性を持った流石のデザイン力に驚かされる。

と、これまで紹介してきたように、全てで100点を越えるイラストが収録されている。巻末には絵にコメントを添えたものもあり、最後までお腹いっぱいという感じ。
手がけている作品が多いだけに、画集に収録されない「こぼれもの」のイラストがあるんじゃないかと思っていたが、記憶してる限りではコミック版エヴァ5巻以降のイラストは全て網羅していると言っていい。収録されなかったものと言えば、つい最近発売されたばかりのアスカの前売りチケット用イラストくらいか。これは発売時期を考えれば、単純に本が製本された後に出来たイラストなんだろう。
ふう満腹満腹。

が、恐ろしいのは豪華限定版はこれで終わらない事。特典として、これまで楽しんできたイラストを全て収録したデータCDが付いてくるのだ!(さすが値段がめちゃくちゃ高いだけある!) 早速ディスクを入れPCで起動すると、壁紙にも設定できとても気軽に全イラストを楽しめた。カタログのようでもあり、美術館のようでもある。

データイラストはこんな感じ。最初から壁紙用に小・中・大のサイズが用意されている。これはサンプル用という事で、最も小さい「小」。可愛すぎるだろ真琴…。



更に豪華版にだけ収録された、細田守監督、鶴巻和哉監督、庵野秀明監督との対談集。それぞれ貞本氏へのキャラクターデザインの依頼の姿勢が全く違って面白い。互いの腹を知った仲の庵野監督はほぼデザインの注文はナシ(ただし乳のサイズだけこだわる)、ほぼ同期の鶴巻監督は頭に既に構築されたものを貞本氏にクリンナップしてもらう、時かけの際に初対面だった細田監督はホテルに缶詰めで一緒に寝泊りして短期間でまとめる…などなど。全てに共通している事は、コミュニケーションからデザインは生まれ、キャラクターの背景(歴史)なくしてデザインなしという事だった。
個人的に最も面白かったのがマッキーとの対談。貞本・鶴巻の両氏が若手アニメーターをいかに育成するか、「先輩」として今後を見ていたこと。社外のアニメを沢山担当して、1シーンをまともに描けなくなっている現場を危険視し、新劇場版を作る「カラー」が少しずつ体制を変えていきたいという明確な意思が見られた。この辺りは興味深かったので貞本ファンだけでなく、ガイナックスファンなら読んでおきたい。(と言っても高価な本なので、手に入らないファンは友人同士で見せ合いっこなどの相談をしてみよう)
この対談部分には貞本氏が関わったアニメのキャラクター設定も掲載されている。特にヱヴァの新劇場版は、「序」の段階ではキャラ設定がなかった為に今回はちゃんと制作してある事に注目。また、アスカの苗字も…。



本画集・限定版最後のコンテンツは、描き下ろしスティックポスターだ。とにかくデカい、長い。左上スミにコミックス1巻を置いたが、いかに大きいかがわかるだろう。「破」の原画・作監作業に入っているためなのか、線・塗り共にアニメっぽいテイストになっている気がする。
因みにこの2枚だけは特典ディスクに収録されていない。前作「DER MOND」でも、特典のアスカ描き下ろしポスターはその画集内に収録されなかった。ので、まさに現物のみの一品モノとなっている。大切にしよう。
とまあ、色々紹介してみたがこれでひとまず終わり。特典無しの普及版は年末に発売予定だ。おそらくそちらは3000円程度での発売と予想されるので、この豪華版は実質+10000円で特典と装丁を手に入れたという事になる…。選ぶのは自由なので、よく考えた上で決めていただきたい。
個人的にどうだったかと言うと、2枚の「複製原画」は正直言ってペラい。厚いボード板にでも印刷されるかと思ったのでその点は拍子抜けした。だがそれ以外の、ズッシリとして丈夫な装丁、描き下ろしのポスター2枚、何より貞本氏のパーソナルな部分に触れられる3人との対談集はとても読み応えがあった。おまけにCD-ROMでいつでもイラストを楽しめるのだから、今は満足した気持ちでいっぱいだ。価格の高さは、これから何度も何度もページを開いて得るものに比べれば、充分カバー出来ると見通した。
値段が張る分、エヴァが読者の日常を侵食していく事は保証しよう。
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